普段、父が慎之介と遊ぶのは、朝5分、夜15分といったところ。天気の良い日は、「遊ぼう遊ぼう」と、特に煩いのだということは、この半年の行動から理解した。
俗人は、50歳を過ぎても虫の居所が定まらず、考え事をしている時に纏わりつかれると、「ウルサイ」と、大声で叱ったりする。
慎之介は、何故叱られたのか理解できず、一瞬たじろぎ凍りつくが、すぐに何も無かったかの様にじゃれ始める。稀にそのまま離れて独り遊びに転ずるような時もあり、そんな時は、「大人気なかった。」と反省し、執拗なスキンシップと共に謝ったりしている。
時には、父の機嫌の悪さを母が察し、慎之介が父に近づかぬよう、腕の中で寝かしつけたりもしている。
「父さん怖いからねえ、近付くんじゃないよう。」
「機嫌のいいときに、遊んでもらおうネエ。」「明日の朝には、治ってるからねえ。」犬に対して絶対的優位である立派な飼い主には、到底なれそうにもありません。