【光】
朝日を浴びて眩いばかりの焼岳が、鏡のように静かな池の水面に映えている。
ふと見ると、私と同年代であろうか、決して妙齢とは言い難いひとりの女性が、
歳には似合わぬおどけた仕草で湖面を覗き込んでいる。
「魚でも泳いでますか?」
不用意に口を突いた言葉に自分でも戸惑いながら、後に続く言葉を捜した。
「どちらまで行かれるんですか?」
呆れるほど月並みな会話で、彼女との不思議な散策が始まった。
小説風 上高地記
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与えられた時間は24時間。
金曜日に仕事を終え帰宅する19:00から、土曜日の19:00まで。
往復530kmのトンボ帰り散策となった。
アヤネエに慎サクの子守を頼めること。
1,000円高速であること。
駐車代を一日500円で済ませること。
という、何ともみみっちい条件をクリアするためのスケジュール。
1,000円高速にするには土曜日の0:00過ぎに松本ICを出る必要がある。
自宅を21:00に出発し、上高地へのアプローチとなる駐車場にクルマを入れ、
シュラフに潜り込んだのは1:30だった。
ネット情報では、広々として足湯もある市営第二駐車場を勧める意見が多いが、
シャトルバスの始発となる沢渡大橋近くの樋口駐車場を選んだ。
朝は6:00に目が覚めた。
一人往復2,000円の乗車券をバス停にある自販機で購入、
途中でタクシーの客引きから何度も声をかけられる。
相乗り料金を尋ねると片道1,000円とのこと。
どうせ他人と窮屈な思いをして乗るなら、バスの方が見晴らしが良いだろうと
最初からバスに決めていたので断り、6:30のバスに乗車することができた。
大正池のバス停に降りると、大正池ホテルの売店も食堂も既に開いていた。
こんなことなら、車中でパンを齧ることもなかったか?
池のほとりは既に中高年カメラマンの列! この光景こそが景勝地のシンボル。